テラヤマワールドから飛び出すトリックスター
森崎偏陸の見つめるもの・・・

1983年、歌人としてキャリアをスタートさせ、その後舞台、映画、文筆などジャンルを超越した表現者・寺山修司がこの世を去る。劇団天井桟敷も解散。
寺山の母・はつは寺山の表現活動を支えてきた九條今日子とともに森崎(もりさき)偏陸(へんりっく)を養子に迎え入れ、偏陸は戸籍上『寺山修司の弟』となった。
寺山亡き後、荒木経惟の『人妻エロス』シリーズのレイアウトとブックデザイン、黒木和雄監督作品を手がける音楽家・松村禎三の音楽助手、イラストレーション界の巨匠・宇野亜喜良が台本と芸術監督をつとめた舞台の演出の他、寺山が残した作品の上映などジャンルにとらわれない活動を続ける偏陸。周囲をとりまく彼らが語る偏陸、寺山、そして劇団天井桟敷。
寺山と出会い、愛され、亡き後もその魂の継承者として日常と幻想、生と死、あらゆる境界線を軽々と飛び越えていく森崎偏陸の不思議な存在感が浮かび上がる。
監督は『樹の上の草魚』(97/製作・配給:ワイズ出版)でデビューを果たした石川淳志。これが初のドキュメンタリー作品となる。7年の長期にわたり偏陸を追い続けた石川監督は、テロップもナレーションも極力排し、カメラの前の偏陸が本人さえも気づいていない、内面を垣間見せるその瞬間を確実にとらえた。人間の尊厳、孤独、豊穣な生の喜びを描き出したドキュメンタリーに仕上がった。
|